コラム2 司法書士試験に思う ~あきらめないって大事です

 7月7日(日)は司法書士の筆記試験ですね。令和最初の試験、そして、聞くところによると民法改正前最後の試験です。

 私が受験してから早10年。司法書士試験もずいぶん変わったんでしょうか。実務に普段使わない知識(民訴や供託法など)はすっかり忘却のかなた。いま解いたら1問も正解できないでしょうね。お恥ずかしながら。

  

 受験中は、こんな細かい判例実務に役立つのかなぁとか、相続で実際こんなに複雑なことってあるのかなぁ?なんて思いながら問題を解いていましたが、受験知識は、実務でかかわる科目によっては大いに役に立ちます!というか、それを知っている前提で判断しないといけないので、予備校が出してくるものはきっちり自分のものにしてください。また、相続の事例なんかは、現実の方がもっともっと複雑でドロドロだったりします。

 

 合格してから、受験中お世話になった予備校でゼミのチューターや講師をやらせていただき、受験生の方に多くかかわる機会がありましたが、合格レベルにいる人だって、みんな自信ありません。むしろ、できている人ほど自信がなかったりします。直前の模擬試験で100点を取っていたって、本番でできる保証はどこにもなく、特に司法書士試験は高い点数が求められるので、ちょっとのミスが致命的になったりします。

 私は、合格した年の試験、本当に緊張して足が震え、試験会場の階段から落ちそうになりました。みんなそんなぎりぎりのところで受かっていきます。

 

 試験会場にいくと、周りの人がみんな自分より優秀な気がして、とてつもない恐怖感が押し寄せてくることがあるでしょう。一生懸命勉強して、勝負をしている人ほど、そんな気持ちになるものだと思います。

 予備校にいたときの感覚では、よっぽど特殊だった年は別として、合格レベルの人の中から順当に合格者がでて、模試などで普段全然とれていないのにポッと受かることはそうそうない試験だと思います。求められている点数のレベルが高いので(全体の8割とれないと安心できない)、番狂わせはあまりない印象です。

 

 一方で、合格レベルにいる人が上から受かっていくかというと、そうとも言えません。極度の緊張もあるだろうし、記述式の試験などは、ちょっとの判断ミスで容易に足切りラインを割ってしまうこともあります。

 運と言ってしまえばそれまでかもしれませんが、最後の最後は気持ちの強さが合否を分ける気がします。

 

 本試験問題は、予備校のものとは少し毛色が違い、勉強してきたことのはずなのに、初めて見る知識ばかりのように感じることがあります。見たことない!⇒勉強が足りなかった?⇒ほかの人はできているはず!!⇒もうだめだ~~~!!!この思考が、一番ダメです。ある程度予備校でしっかり勉強してきたのであれば、初めてみるような気がしても慌てることはありません。他の人も同じだからです。

 

 私は、忘れもしない平成20年の試験で、このダメループにはまりました。試験中の絶望的な気分は、今でもはっきり覚えています。忘れたいんですけどね。ショックすぎて忘れられません。

 その年は、不動産登記が今までの試験形式から大きく変わって、実務をまったく経験していなかった私は、その「別紙」といわれる膨大な資料を前に完全お手上げで、その時点で試合終了のゴングが鳴りました。自分だけできなかったという敗北感でいっぱいでした。

 でも、ほかの人もそうだったんですね。その年は、不動産登記の記述が0点続出で、ふたを開けたら記述式の足切りまであとわずか1.5点。落ち着いてもう1問の商業登記を丁寧に解いていたら、または不動産登記のわかったところを1か所でも書いていたら、受かっていたかもしれません。こんなことを思っても、後の祭り。試験中に心の中であきらめた時点で負けでした。

 

 ですから、「あきらめない」って、口では簡単に言えますけど、八方ふさがり、方法が見つからないような状況になったときが勝負だと思います。決して、自分だけができないとは思わないこと。受かる人だって、アップアップで受かるんです。ぜひ、これまでやってきたことに自信をもって、1点でも多く取るという気持ちで、くらいついてきてください。応援しています。

 

 

コラム1 相続登記を放置するとどうなる ~あの相続人はいまどこに

 ある沼のほとりにある田んぼの相続についてのお話です。 祖父が急死したことにより、跡取りとしてその養子になっていた孫が、祖父の土地すべてについて相続登記をしようと不動産の登記記録を取り寄せました。すると、祖父のそのまた祖父名義のまま登記がとまっている土地があることに気がつきました。

  そのまま放置するわけにはいかないので、相続人がだれであるかを確認したところ、すでに亡くなっている祖父の叔母には外国籍の養女がおり、この養女も相続人の1人であることがわかりました。

 

 都内で焼き肉屋を経営していた独身の叔母は、跡取りに困って養女を迎えていたのですが、この養女、養親である叔母が亡くなったとき、勝手に金庫を開けて「何も入っていなかった!」と言い残し、逃げるように日本を出てしまっていたのです。最初から仕組まれていたかのような展開ですが、法律上は親子のため、親族は深く追及できないまま泣き寝入りをしていました。

 このようなことがあったため、この養女とはできればもう関わりをもちたくなかったのですが、田んぼの相続登記を入れるには、相続人全員と連絡をとり、相続に関する同意を得なければなりません。

 結局司法書士は、養女を含め、相続人全員の生存を確認した上で居所を探し出し、さらにすでに亡くなっている相続人についてはその相続人とのやり取りを経て、やっとの思いで最終の相続人である孫へ相続登記を入れることができました。

 

 このように、相続登記がなされないまま長い年月が経ってしまうと、戸籍自体破棄されていたり戦災で焼けてしまっていたりでそろわないことも多いですし、相続人が増えれば増えるほどハンコをもらうのが難しく、協議が調わなくなってそのまま放置してしまうケースもあります。これは問題の先送りで、次の世代で登記を入れようとするときには、さらに苦労をすることになります。 

 こんなこと本当にあるの?と思われるかもしれませんね。なにを隠そうこの話、私自身の実家で起こった実話なのです。相続問題は、意外に身近に潜んでいるかもしれません。 

 今現在争いなく所有者と信じている不動産であっても、一度登記記録を確認し、だれがどのように財産を受け継いでいくのかを家族で話し合う機会を積極的に設けていくことで、次の世代に課題を残さないようにしていきたいですね。